「Nikon Z 5」試用レポート

2020年11月から2020年12月まで、マウント移行のための機材整理の都合で一時的につなぎのカメラが必要になったため、良い機会だと思い「Nikon Z 5」を借りて使ってみました。今更ですが、所感を書き残しておこうと思います。

使ってみたきっかけ

私は当時、複数のマウントにまたがっていたメイン・サブの機材を売り払ってNikon Zマウントに移行する途中でした。

次期メイン機は「Nikon Z 6II」にすると決め、本命のレンズと合わせて発注済み。しかし、「ワンランク下のZ 5でも良かったんじゃないか」という考えも頭の片隅にありました。

なぜZ 6IIとZ 5で迷っていたのか、それはスペック上はどっちでも良さそうに思えたからです。もちろん、隅々まで見ればそれなりの性能差が見えてはくるのですが、軽く調べた程度では「ほぼ静止画しか撮らず、動体も滅多に撮らない自分の用途ではZ 5でも十分じゃない?」という印象でした。

実際に使ってみればZ 5に足りない部分もそれなりに見えてくるものの、一見Z 6/Z 6IIを食ってしまうような機種に見えます。少なくとも、仮にZマウントを選ぶ初心者がいたとすれば、Z 5とZ 6/Z 6IIを比較した場合、十中八九はZ 5に落ち着くはずです。

そんなわけで、自らの選択が正しかったのかを検証する意味でも、つなぎ機材としてZ 5も一度試しておくことにしたのです。

Z 5というカメラは何者なのか

Z 5というカメラを端的に表すと、「上位機種があるからこそ作れた、バーゲンプライスの普及機」です。「これを最初に出せば良かったのに」なんて意見も散見されますが、Z 6/Z 7よりも先にZ 5をこの価格で作ることはまず不可能だったと言えます。

Z 5は、モデルチェンジを間近に控えた上位機種のZ 6(※発売当時)から多くのパーツを流用して作り上げられているからこそ、他社で言えばα7IIIあたりと競合する普及帯の機種でありながら、上位機種に限りなく近い仕様になっています。

Z 6からスペックダウンされた部分を挙げると、センサーが変わって高感度耐性が落ちたこと、連写性能が12コマ/秒→4.5コマ/秒に落ちたこと、動画周りでは全画素読み出しやN-Log出力が削られたこと、液晶モニターの解像度が低いことぐらいです。一方で、Z 6登場時に賛否両論だったXQDオンリーのカードスロットを改め、SDカード2枚のデュアルスロットにしたという長所もあります。

ざっくり言えば、「暗いところで手持ちで頑張る人」「動きの速い被写体を追う人」「動画をガチでやる人」以外ならこれでいいんじゃない?という非常にコストパフォーマンスの高い内容です。

もっとも“コスパが良い”のはユーザー視点の話で、メーカー視点では「普及機なのに上位機種ゆずりのパーツばっかでコスパ最悪、キツいけど今これを売らなきゃ先がないから身を削って頑張ります」的な製品なんでしょうね。

Z 5を眺めてみる

Z 5の外観はZ 6やZ 7にそっくり。外装の何割かは同じパーツなので当然ではあります。目立つ違いは、右肩のサブ液晶がないぐらいでしょう。

しかし、ファインダーがあるペンタ部の造形だけは初代6/7、5、6II/7IIで少しずつ違うんですよね。ヌメッとした曲線的な造形の初代6/7に比べるとZ 5はシュッとした直線的な造形で、幾分マシに見えます。決して格好良くはありませんが。

手に取ってみると、背面カバーなどが樹脂パーツに置き換えられているとは思えないほど、しっかりした作りです。ダイヤルなどの操作感、カードスロットなどの開閉部の安定感など、エントリー向けフルサイズとしてはやりすぎなくらい「良い道具」らしさに溢れています。まあ、そこが信頼に足るニコンクオリティーでもあり、商売下手な部分でもあるのかなぁと。

ちなみに、販売戦略的には「小型・軽量なエントリー機」のように振る舞うこともあるZ 5ですが、実はバッテリー込みの重量はZ 6と変わりません。Z 5と合わせて投入された24-50mmの小型ズームレンズとの組み合わせを前提に小型需要も拾っているのですね。

Z 5で撮ってみる

スペックを読み解く限りでは、動き物以外の普通の写真を撮る分には上位機種よりも不利な要素は少ないように思えます。なお、ここで掲載する写真は24-50mmではなくZ 6/Z 7のキットレンズとしてお馴染みの24-70mm F4で撮影したものですので、あくまでボディの評価と捉えてください。

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EXPEED 6は撮って出しでも良い具合ですし、高性能レンズが揃うZマウントを味わう土台として、Z 5は十分な性能があるように思えます。使い始めたばかりの晴天の屋外では心から「これで良いじゃないか」と思えました。低感度での画質に限ればZ 6に劣ることはないでしょう。

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「あれ、意外としんどいかも?」と弱点が見え始めたのは、暗くなってから。

と言っても、先述の「高感度耐性の違い」の話ではありません。裏面照射型ではないものの、そこは現代の35mm判2,400万画素クラスのベイヤーセンサー。常識的な範囲の感度で使い物にならないほど酷いわけもないのです。

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「Z 5は暗所に弱い」というのはある側面では事実です。それは高感度耐性の話ではなく、AF性能の話。夜とは言わずとも、ちょっと薄暗くなってきたかな、ぐらいの時間帯でも目に見えて衰えます。(ストロボなしで)室内でよく撮る、それも元気なお子さんを撮る……なんて利用シーンになってくると、連写性能の低さとも相まって「おすすめできそうでできない」ユーザー層が考えられますね。

まとめ

Z 5は、使い方にマッチする人なら非常にコストパフォーマンスの高いフルサイズエントリー機と言えます。

高感度や動体、暗所AFなどが不要な人にとっては、上位モデルと同じ写りが16万円程度で手に入ります。風景写真やスナップが中心の人、オールドレンズで遊びたい人、すでにZに手を出していてサブ機が欲しい人などであればとても良い買い物になるでしょう。

単純な写りのコスパだけでなく、ニコンらしい作りの良さは下位モデルだからと言って決して妥協されていませんし、ZシリーズのEVFは先行する他社のミラーレスと比べても良く出来ています(S○NYのEVFなんか、画素数だけ増えても光学系がね……)。長く快適に使える道具としても価格以上の価値があると感じました。